たらのコーヒー屋さん - 2 店舗目

たらのコーヒー屋さんです。

コロナ関連の記事 – 3/23(月)の新聞から

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コロナ関連の記事を月曜日(3/23)の新聞から拾ってみました。

 

www.irishtimes.com

 週末に公園や浜辺に人が多く集まって、ソーシャル・ディスタンスの間隔 (2メートル)が保てないほど密集していたらしいんですね。政府に一般人からのクレームがいっぱい入ったらしい。政府としては、今のところこうした公共空間を立ち入り禁止にするつもりはないが、人との距離は保ってくださいとのこと。まあ、行った人もそんなに混んでるとは思わなかっただろうから、と。

 

ソーシャル・ディスタンシング戦略はかなり徹底されていて、スーパーのレジの列での間隔は守られているし(守っていないと、他のお客さんやレジの人からやんわり注意される)、お店に入れる人数にも制限があるので、店の前に列を作ったりしているのだが、そこでも2メートルの間隔をあけて並んでいる。

 

次は飲食業界の話。

www.irishtimes.com

 

飲食店を開けるかどうかは経営者の判断にまかされているが、大部分の飲食店は閉じている。デリバリーやテイクアウトのサービスを提供する店も多いのだが、この週末はそういう店に注文が殺到して、お客さんを捌ききれなかったという話。

 

食材が早めになくなってしまったところもあるし、長い列ができて長時間待たせてしまったところもある。これでは営業は困難だということで、テイクアウトのサービス自体を取りやめてしまったところもある。

 

あるお店では、3件ほど注文を受けたら、携帯電話を機内モードにし、料理ができたら次の3件を受けるために通常モードに戻す、という形で営業したそうだ。

 

それから、理容・美容業界。

www.irishtimes.com

 

美容院や散髪屋さんも閉じているところが多いんですが、営業するかどうかは経営者の判断に委ねられている。そして、どう考えても美容業界はソーシャル・ディスタンシングの距離を保てないわけですよ。お客さんの髪を触るわけですから。

 

そこで理容師さんや美容師さんの組合は、この業界におけるソーシャル・ディスタンシングのガイドラインを明確にするようにと政府に要望を出したというニュースです。

 

最後はブックメーカー業界。 

www.irishtimes.com

こちらは日曜のニュースですが、ヨーロッパではスポーツの試合がほとんど中止になっているので、卓球や日本の野球など、こちらではなじみのないスポーツが賭けの対象として人気になっているという記事です。

 

月曜日夕方の段階で、アイルランド共和国の感染者数は1125、死者は6。

北アイルランドの感染者数は148、死者は2。

 

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最近よく見る Youtube チャンネル

私が最近よく見ている Youtube チャンネルをご紹介します。

 

まずは、広瀬隆雄さん。投資家です。

 

www.youtube.com

 

ご自身が語る経歴によると、慶応大学ではバンドをやってたので就職活動はまったくせず、先輩に引っ張られる形で建設会社に就職。こりゃだめだ、と思ったらしくて英語を勉強して、プラント建設会社に転職して中東へ。その後、日本の証券会社に入り、米国の証券会社に転職。海外生活は37年らしい。年齢は還暦前後?

 

アメリカの証券業界の一線で活躍していた人が、経験や知識をもとに忌憚なく話すのを聞くのは、やはり面白いです。

 

記憶力が凄いですね。この動きはxxxx年のあの場面と同じ、みたいな話がスラスラ出てきます。この間の0.5%の利下げがダメな理由 (というか、投資のプロがダメだと思った理由) とか、広瀬さんの話を聞かなければ私は想像もつかなかったでしょう。(詳しく知りたい方は次の動画の 24:00 あたりからどうぞ)。

 

www.youtube.com

 

エピソード語りもおもしろくて、ニューヨーク連銀の総裁も務めたアンソニー・ソロモンが広瀬さんが務めていた会社の副会長に収まって、広瀬さんは彼のカバン持ちみたいなことをやってたらしいんだけど、ソロモンが言うには、中央銀行の仕事はストリッパーみたいなものだと。中央銀行でもストリッパーでも、その結末はみんなが知っている(中央銀行は利率を下げる、ストリッパーは裸になる)。でも、だからといって無造作に脱いでは(利率を下げては)いけない。めりはりをつけて、丁寧に、ショーアップしなければならない。とかね。

 

まあ、話を聞いていると、素人が思いつきで売買しても、そりゃ勝てんわな、と思わせてくれます。

 

日本経済がぶいぶい言わせていた頃にアメリカにわたり、いくつもの鉄火場を渡り歩いた広瀬さんがその経験をこのように日本語でフィードバックしてくれれば、日本の投資リテラシーも上がるのではないかと思います。

 

次はロシア人女性のアリョーナBさん。

 

www.youtube.com

 

東京大学を卒業して現在はコンサル会社に勤務。モデルなんかもやっている。

 

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ロシア人女性のYoutuber は何人もいらっしゃって、だいたい日本語で動画をつくっている。あしやさんという別のロシア人Youtuber によれば、言語によって広告の単価に違いがあって、英語 > 日本語 > ロシア語らしい。英語はネイティブではないし競争も激しいということで、最適解が日本語ということらしい。

 

ロシア人女性のしゃべる日本語はほぼ例外なく物腰が柔らかい印象がある。英語でいうと soft-spoken。ロシア語のことはまったくわからないけど、これはたぶんロシア語も日本語と同様に口の先っぽだけを使って発音する言語だからなのではないか、というのが私の仮説。

 

英語は喉 (R の音など) を使うので、英語ネイティブの方は日本語をしゃべるときも喉を使うことが多い。だから、ごつい印象になることが多いと個人的に感じる。

 

日本人も、ある程度英語をしゃべれるようになると、英語しゃべるときには喉を開け気味にするので、日本語しゃべるときよりも英語しゃべるときの方が声が低くなるのはよくある話。

 

さて、アリョーナさんのチャンネル。彼女はロシアにいた頃から日本のアニメが好きでよく見ていて、日本語にも触れていたということで、とても自然、どころかエレガントな日本語。聞いているだけで心地よいリズムとトーンです。

 

申し訳ないんだけど、広瀬さんはしゃべりがゆっくりなのでいつも1.75倍速で聞くのですが、アリョーナさんの場合はノーマル速です。

 

動画の内容ですが、日本在住外国人Youtuber定番の「私が日本で感じたこと」みたいなのもありますが、アリョーナさんは日本国内の旅動画が多いんですね。それも、割とメジャーではないところを回るんですね。たとえば、最近の動画で訪れたのは、横手、弘前、男鹿です。

 

広瀬さんもアリョーナさんも、Youtubeを本格的に初めてまだ間もないです。広瀬さんが1か月ぐらい、アリョーナさんが3か月くらい。お二方とも現在の登録者数は既に1万を超えた。たぶんすぐに10万に届くと思う。

 

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営業中のいいお店 - Dollard & Co と Bestseller Dublin

私はだいたい昼は外で食べて、夜は自炊するようにしています。一人暮らしで仕事も家でしているもんですから、どうしても外に出て息抜きしたくなるんですね。

 

ところがコロナウイルスの影響で近所のお店はほとんど閉まってしまって行くところがありません。ジムも閉まってますから、運動も兼ねてということで街まで歩くわけです。

 

ティーセンターには開いているお店もいくつかあるんですが、昨日の土曜日(21日)も開けてくれていた飲食店を2つご紹介します。

 

まず、ドラード・アンド・コ (Dollard & Co) です。

 

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ここはまず建物自体が歴史のあるものなんですね。1888年に建設された建物で、もともとはDollard Printworks 社という名前の印刷工場でした。郵便好きの私の興味を引く事実は、アイルランドが独立して最初の切手はここで印刷されたということです。建物の詳細は以下の Webサイトに詳しいです(英語)。

 

www.buildingsofireland.ie

 

80年代まで工場として使用されたあと、オフィスとなり、1階は長きにわたって使われないままとなっていたようです。

 

ここが改装され、ニューヨーク風のフードマーケットとしてオープンしたのが2017年8月のこと。当時はかなり話題になりました。場所はリフィー川沿いのWellington Quay。かつてU2のボノとエッジが所有していたクラレンス・ホテルの隣です。

 

www.irishtimes.com

 

中央にオープン・キッチンがあり、その周りにカウンター席やテーブルが配置されています。メニューは、ブレックファストなどのグリル料理や、ニューヨーク風のピザのスライスなどです。

 

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高級スーパーマーケット的な要素もあって、肉や魚、ワインやウイスキー、他のスーパーでは置いてないようなちょっとお高めの食料品などが販売されています。

 

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ここは店内の雰囲気がいいんですよ。スペースが広々としており、窓から自然光がふんだんに差し込みます。

 

実は私、ここで食事をしたのは昨日の土曜日が初めてでした。ちょっと高級な印象を持っていたので気後れしていたんですね。でも、ピザ(スライス)とコーヒーを頼んで8ユーロ弱でしたからそんなに高いわけではありません。フル・ブレックファストで13.50 ユーロだそうです。

 

ここは私の家からも近いので、もっと早く来ればよかったと思いました。ここのコーヒーはラスマインズにあるTwoFifty Square Coffee 焙煎所のコーヒー豆を使っています。

 

さて、2軒目は、Dawson Street にあるベストセラー・ダブリン (Bestseller Dublin)。ほんとうに街の真ん中ですね。ここはカフェですが、木/金/土曜は夜も開いていて、ワインバーになるようです。

 

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ここのオープンも4~5年前と最近なのですが、その前はアイルランド全国聖書協会(National Bible Society of Ireland)という団体が入っていました。そういったことから「ベストセラー」という名前になっているのかな、と思います。 

 

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ここもインテリアが素晴らしいです。ドアから入ったところで注文を済ませますが、テーブル席は中二階にあるので階段を登るのですね。これがいいのです。

 

照明は暗めで雰囲気があります。壁にはいくつもモダンアートの絵が額縁に入って飾られていて、さらに本や小さなオブジェクトも所狭しと並べられています。確か、以前来た時には聖書を吹き込んだカセットテープトイレに数十本置かれていたけど、今もあるかな?

 

ここのコーヒー豆はBADGER & DODOという焙煎所のを使っています。私はここではいつもエスプレッソを頼むことが多いです。2.60ユーロ。

 

まあ、なんといいますか、こんな状況の中で店を開けてくれるのはありがたい。私にとってオアシスのような存在です。

 

dollardandco.ie

 

www.bestsellerdublin.com

 

 

 

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鎮静剤で眠りにつく街

鎮静剤って打たれたことあります? 私、10年ほど前に大腸内視鏡検査のときに打たれたことあります。点滴みたいな管を肘の内側につながれて、看護婦さんに「10からカウントダウンしてくださいと言われて、7ぐらいで記憶なくなりました。気持ちよく眠りにつき、目が覚めたらすべてが終わっていました。目覚めはよかったです。

 

さて、「町がゆっくり死んでいく」みたいなタイトルにしようかと思ったんですが、それだと大げさだと思ったのでやめました。死ぬわけじゃないので。鎮静剤でゆっくり眠りにつく感じ。ジムが閉じ、映画館が閉じ、ブックメーカーが閉じ、飲食店も多くがシャッターを下ろしています。

 

スミスフィールドではチェーン店のコスタも店内での飲食を禁止して、テイクアウトのみ。ブリトーの店のブージャムも昨日まで開いていたと思ったが、今日はテイクアウトのみ。私がよく行くシナモン・カフェは今日はたぶん土曜だから休み。月曜からまた開けてくれると思う。

 

1軒だけ開いているのは私もたまに行く Bel Cibo というイタリアン・レストラン。ここは面白い張り紙がしてありました。

 

 

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左側: 「ちゃんとした食事を注文しない場合は、アルコールは提供できません。ウチはバーではないので。それをやると店を閉じなければならなくなってしまいます」

 

パブは全面的に営業を取りやめているので、そういう使い方をするお客さんもいたのでしょう。

 

右側:「スタッフがテーブルに伺う回数を減らしています。お支払いはレジでお願いします」

 

ソーシャル・ディスタンシングの一環ですね。こちらのレストランでは、いつもなら基本的にテーブルで会計します。

 

ティーセンターの方も歩いてきました。

 

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こちら(↑)が3月21日(土)午後1時ごろのグラフトン・ストリートの様子です。ここはダブリン一のショッピング街で、普段なら人がごったがえしています。

 

8割方の店が閉じており、人影もまばら。トーマス・ブラウンは閉店。M&Sは開いていました。あそこはスーパーが地下にありますからね。スーパーやコンビニはどこも開いています。

 

バーガーキングはフルで営業しているようでしたが、マクドナルドはテイクアウトのみ。

 

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バスカーはギター演奏の方が1人だけいました。皆さんの気分が沈みがちなこういうときに、エンターテイメントを提供していただきありがとうございます。

 

ティーブンス・グリーン・ショッピング・センターも一応開いてましたが、中の店はほとんど閉まっていました。

 

それから、昨日あたりから、白人でもマスクをしている人をチラホラ見かけるようになりました。それまでは、マスクをしているのはだいたい東アジア系の人でしたが。現在でも、マスクをしているのはまったくの少数派。1%くらいかもしれません。私もしてません。

 

「マスクあります」の張り紙をしているコンビニを昨日初めて見ました。

 

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ポケの店

パトリックス・デーの翌日、お昼時に街を歩いていた。外食しようと思ったのだが、レストランはだいたい休み。カフェはあいているところもあったが、あんまりピンとこなかったので、これまで入ったことのないお店を試してみることにした。

 

ヘイプニー 橋 (Ha’penny Bridge) を北にわたったところにあるリフィー・ストリート (Liffey Street) の Akaka という店です。Hawaiian Poké in Dublin と書いてある。この店の存在は前から知っていたけど、ハワイアン・ポケがなんだかわからないので尻込みしていた。ご飯にパイナップルとか載ってたら嫌だな、とか。

 

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店の前で、スマホで調べてみたところ、ポケは元々は “ブツ切りにする” という意味のハワイ語。今では、生魚をサイコロ切りにしたものをサラダなどと共にライスの上に載せて出す料理の名前になっているそうだ。Pokéは英語ではポゥケイのように発音するらしい。

 

生魚とご飯ならいけそうだということで、入りました。お昼どきなのに誰もお客さんがいなかった。まあ、コロナウィルスの影響で人出があまりなかったので。

 

www.akakapoke.ie

 

メニューを見てもよくわからなかったので、一番上にあった Ahi Tuna というのを頼みました。

 

吉野家のテイクアウトを頼んだときに出てくるようなプラスチックの容器 (ボウル) に食材を入れていくのですが、まず “ベース (Base)” を選びます。ベースとは、ボウルの底に敷く食材です。牛丼の白米にあたるものです。ベースは、白米、ブラウンライス、ホウレンソウ、キヌアなどの中から選びます。私はブラウンライスを選びました。

 

その上に具材が載るわけですが、Ahi Tuna の場合、これはツナ、枝豆、ワカメ、焼きコーンでした。味付けは Akaka 醤油なるものです。その上に、薬味的なものをトッピングでかけることができます。これは無料。8種類くらいあったのですが、私はザクロの実とガリを頼みました。

 

こんな感じになります。

 

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正直、おいしかったです。ペロっといけてしまいます。新しいタイプのファストフードですね。ただ、お値段がレギュラーで11ユーロ、ラージが13ユーロ。私が食べたのはレギュラー。たとえば、ブリトーあたりだと7~8ユーロで食べられますから、値段的な競争力は高くありません。ただ、ヘルシー感は満点です。

 

ポケがダブリンでどの程度知名度を獲得しているのかわかりませんが、歩いて帰る途中に ケーペルストリート(Capel Street)にもポケの店がありました。

 

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かつての輝きを取り戻しつつあるアイリッシュ・ウイスキー

ここ10年ほどのアイリッシュウイスキーの復興は目覚ましいわけです。

 

現在アイルランド島には、稼働中、建設中、承認待ちの蒸留所を合わせると蒸留所が約35あります。ジェムソンなどを製造するアイリッシュ・ディスティラーズ社のニュー・ミドルトン蒸留所、メキシコのホセ・クエルボ社傘下のブッシュミルズ蒸留所、スコッチのウイリアム・グラント&サンズが所有するタラモア蒸留所など大手もあれば、マイクロ・ディスティラリーと総称される新興の小資本の蒸留所もあります。

 

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ブッシュミルズ蒸留所

 

もともとアイルランド、特にダブリンは世界に名だたるウイスキーの生産地でした。19世紀の後半のことです。この頃、アイリッシュウイスキーは世界のウイスキー市場の約70%を支配していました。ロンドンで販売されるウイスキー3本に2本はアイルランド産であり、アイリッシュ・ディスティラーズ社に残る当時の記録によれば、同社の前身の会社が蒸留したウイスキーはブラジル、モーリシャスホンジュラスオーストリアニュージーランド、カナダにまで輸出されていたそうです。

 

ところが、20世紀に入って潮目が大きく変わります。それは、蒸留所自体やウイスキーの品質の問題というよりも、外部の政治的な要因によるものでした。

 

第一次世界大戦により生産が大きく乱された後、大きな輸出市場であったアメリカで禁酒法が制定されます。また、1921年にイギリスから独立したことにより、世界に散らばる植民地を含む大英帝国から事実上締め出されます。関税のかからないスコッチ・ウイスキーに価格的な競争力でかなわなくなったからです。

 

さらに、製造方法のイノベーションでもスコットランドに後れを取ることになります。伝統的な製法では、大麦を原料としてポット・スチルと呼ばれる形式の蒸留器を使って蒸留するわけです。しかし、ポット・スチルではバッチごとに中の液体を入れ替えて掃除しないといけないため、蒸留に時間がかかります。

 

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ボットスチル @旧ジェムソン蒸留所

この点を改良しようとイニーアス・カフィ (Aeneas Coffey) というアイルランド人が連続式蒸留器を発明します。19世紀前半のことです。カラム・スティルまたは彼の名前をとってカフィ式蒸留器などとも呼ばれます。連続式蒸留器ならポット・スチルよりも効率的にウイスキーを製造することができます。

 

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イニーアス・カフィ

 

ところが、アイルランドの蒸留所は連続式蒸留器の採用を拒否します。味が落ちるという理由もあったかもしれませんが、蒸留所側にものづくりのこだわりみたいなものがあったのかもしれません。連続式蒸留器は海を渡ってお隣のスコットランドで採用されることになるわけです。

 

19世紀の終わりごろになると、スコットランドブレンドウイスキーアイルランドモルトウイスキーの競争は激しくなります。アイルランドの蒸留所は、連続式蒸留器で作ったアルコールなどウイスキーとは呼ばせないぞ、ということで、「Truths about Whisky」という出版物まで出してキャンペーンします (スコットランドのポット・スチル蒸留所ももちろんブレンドウイスキーには反対の立場です)

 

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連続式蒸留器 @キルベガン蒸留所

 

争いを解決するために、ロンドンで王立委員会が設立され、37回にも及ぶ慎重な協議の結果、連続式蒸留器で作ったアルコールをブレンドしたものもウイスキーと呼んでいいと正式に決定されました。これにより、スコッチ・ウイスキーの勢いはさらに増し、アイリッシュウイスキーの立場は相対的に弱くなっていったわけです。

 

そんなこんなで、20世紀半ばにはアイリッシュウイスキーは絶滅寸前に追い込まれます。最後まで残っていたアイルランド共和国の大手3社 (ジェムソン、パディー、パワーズが合併してアイリッシュ・ディスティラーズ社を設立 (1966)10年ほどかけて製造拠点をミドルトンの蒸留所に統合します。こうして1970年代後半から80年代にかけては、北アイルランドブッシュミルズ蒸留所と合わせてアイルランド島に蒸留所が2つしかない状態が続いたのでした。

 

ところが、ここ10年ほどの間に、新しい蒸留所が次々と設立され、アイリッシュウイスキー業界は大きな賑わいを見せています。輸出産業の柱の1つに成長しつつあると言っても過言ではありません。

 

また、ウイスキー・ツーリズムと言って、蒸留所の見学に訪れる観光客も多いわけです。アイリッシュウイスキー協会(IWA)の推定によると、2018年にはあわせて約923,000人の観光客がアイルランドの蒸留所を訪問しています。この数は5年以内に数百万にまで上昇するのではないかと同協会は見ています。ウイスキーが目的の観光客は1人平均約60ユーロを使うので、アイリッシュウイスキー業界の売り上げに約5,500万ユーロほど貢献しています。これにプラスして、宿泊費や交通費がアイルランドに落ちることになります。

 

個人的な話になって恐縮ですが、私自身はダブリンの旧ジェムソン蒸留所の近くに住んでおり、ジェムソン蒸留所の昔の建物がSOHO事業者向けのオフィスとして貸し出されていたのでその一部屋を借りていたこともあります(私は自営業です)。また、アイリッシュウイスキーの黄金時代にたくさんの蒸留所が集積していたため、ゴールデン・トライアングルと呼ばれていたリバティーズ地区にも歩いていける距離です。

 

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旧ジェムソン蒸留所のチムニー。現在は展望台として再利用

 

私はお酒がそれほど強い方ではないので量は飲めないのですが、ウイスキーにまつわる歴史やビジネスの話には興味が尽きません。蒸留所見学体験記 (蒸留所に限らず私は工場見学がとても好きです)などを含め、このブログでは現地に住んでいる人間ならではのアイリッシュウイスキー情報をお届けできたらと思っています。よろしくお願いします。

 

コロナ・ウイルス対策としての社会距離戦略

コロナ・ウイルス対策に関連して、Social Distancing とか Herd Immunity とかこれまで聞いたことのないフレーズを目にするようになりました。Herd Immunity は「集団免疫」で訳は定着していますが、Social Distancing は訳がゆれているようですね。直訳して「社会的距離」ではわからないし、「社会距離戦略」なんて訳されてもいるようですが、「社会(的)距離」というと心理的な距離のような印象を日本語話者は抱くのではないかと思います。Social Distancingは物理的な距離の話です。

 

Social Distancing 戦略は私の身の回りでも次々と実装されています。

 

私の近所のスーパー(Fresh)では、昨日あたりから、レジに並ぶエリアにビニール・テープで2メートルごとに仕切りをつくり、「この仕切りの中にお客様が一人だけ入るようにしてください」と床に張り紙してあります。別のスーパーでもビニール・テープの仕切りは作ってましたね。

 

 

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Fresh ではテイクアウトできるホット・ミールも出しているのですが、注文の際にカウンターから離れるようにという張り紙があり、またレジでお金を払う際にも距離を取るように張り紙がありました。

 

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その他の Social Distancing 戦略としては、以前も書きましたがカフェやレストランはテーブルの数を減らして客と客の間が2メートルほど開くようにしています(もちろん複数で連れ立って来たお客さんは同じテーブルに座ることができます)。

 

それから、同時に店内に入れる客を制限しているお店も多いです。私がよく行くカフェも満員なら30人ぐらい入れるところを8人までと制限していますし、スーパーでもセキュリティ・スタッフがドアのところに立ってナイトクラブのバウンサー(いわゆる黒服)みたいに客の入場を管理していたりします。

 

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さて、話は変わります。新聞に載っていたんですが、アイリッシュウイスキー業界もコロナ・ウイルスと闘うために立ち上がりました。ジェムソンを製造するアイリッシュ・ディスティラーズ社が、自前の設備を活用して、アルコール・ジェル(ハンド・サニタイザーの中に入っているようなジェル)を大量に製造して保険局(HSE)に無償で提供すると発表しました。

 

www.irishtimes.com

 

HSE はそれを最前線で頑張っている医療関係者に配布するとのことです。

 

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